訪問着
霞取能衣
安土桃山時代に作られた能衣装のデザインを参考に摺箔と平糸だけで現した重厚な訪問着です。「渡し縫い」という技法で毛足の長い刺繍で下地を縫い、中の柄をマツイ縫や綴じ縫で下地の糸を抑えるように刺繍しています。比較的ゆったりとした柄と金銀糸を使用せず重厚ですが華美になりすぎないのが特徴です。
附下
暈し波縞に貝ちらし
此方の付下は一見するとただの暈しに見えますが、波縞模様の小紋型で糊置きし裾暈しを鶸色で染め上げ糊を落とした後、再度黄色の地色を暈し合わせています。貝は菅縫い、縫い切、金駒縫、マツイ縫いを刺繍箇所によって使い分けています。糸艶を損ねない地引の切り抑え刺繍が見事な逸品です。
陶板模様
コバルトブルーに染めた駒無地に古代ペルシャのタイル模様をアレンジしました。菱の中は金泥摺で濃淡を表現して鮮やかなブルーの色糸で菅縫い、縁を羽衣という光沢のある金糸でマツイ縫いであしらいました。昨今の地紋のある生地が大方の中で強撚糸の駒無地が放つ落ち着いた輝きと柄の中の刺繍が個性的な逸品です。
蒔絵 菊
伝統工芸の代表的技法である蒔絵をイメージして菊は糸目友禅、切箔をちりばめ砂子を振ることで奥行きを表現しました。刺繍糸は白糸ではなく白糸に銀糸を混ぜた糸で縫い切カスリという暈し技法を用いています。これは花びら一枚ごとに角度を変えて刺繍するので見る角度によって輝きが変化します。地色もこっくりとした臙脂色に金彩と刺繍が放つ立体感が素晴らしい逸品です。
松葉散し
網代模様の紋意匠の生地に松葉と松笠をオール刺繍で表現しました。見所はマツイ縫いによる暈しで松葉の先端は刺繍糸を割って細くした糸でシャープさを強調しています。暈しが単調にならぬよう色の混ざり具合を調整したりとベテラン職人でしか成せない逸品です。
帯
染九寸帯 金銀薔薇
石目と呼ばれる細かい市松の地紋の生地に金銀箔の摺はがし技法と白糸と銀糸の混ぜ糸のマツイ縫いでモダンに仕上げました。単に金銀箔をはるだけでなく、貼ってからブラシ等で剝がすことによって下地の友禅が透けて見え平面的な輝きを奥行きのある輝きに変化させました。更にマツイ縫いを要所に入れてエッジを効かしています。
塩瀬地染九寸帯 御所解
小袖の代表的意匠の御所解模様の一部を帯地用にアレンジしました。防染糊で模様が染まらないようにする白上げ技法を用いて摺疋田とカチン描きでシンプルに仕上げて最後は金駒刺繍と平糸で縫い切り、菅縫いでボリューム感を演出しています。地色は藍納戸色で黒地程コントラストがきつくなく、尚且つ塩瀬地なので小紋だけでなくカジュアルな付下にもあわせていただける着用機会が多い帯です。